camell
女性限定・オトナ写真部
 camell(カメル)

STORY
2026.10.23

「なんか違う」瞬間を撮って、世界をあじわっていきたい

昔から、王道と呼ばれるものより、そこから外れたものが好きだ。何かを選択するときは、だいたいの場合、王道ではないけれど、自分にとっておもしろいほうを選んできた。この場合の「おもしろい」とは、単に面白いだけでなく、味わい深かったり趣深かったりという意味だ。
おもしろいほうを選びたいという気持ちは、小さいころから今に至るまで、ずっと変わらないわたしの根っこのようなものだ。根っこにその気持ちがあるからこそ、写真も同じように、おもしろいと思える瞬間にシャッターを切ってきた。

9月に、15年以上愛読しているWebサイト・デイリーポータルZを主宰する林雄司さんと、名古屋の面白いところを発信し続けるフリーライター・大竹敏之さんの「名古屋ではじめる!自分なりの“面白い”の見つけ方、育て方」というトークイベントに参加する機会があった。面白いものを見つけることが上手なお二人のトークイベントは刺激的で掛け合いも楽しく、メモを取りながらずっと笑っていた。
そこで林さんがおっしゃったことが、すっと自分の中に入ってきた。

「(他と)なんか違うっていうのは面白さなんですよね。間違い探しみたいな気分で街を歩いてみると、『これ、なんか違うんじゃないか』っていう面白さに出会えて、たいへん気分がよいわけです」(要約)

……あ。そうか。
わたしが撮っている写真って、そういうことなんじゃないか。
誰に伝わるかもわからないけど、わたしが感じた「なんか違う」という瞬間。それは街なかに潜むレトロな看板だったり、普段と違う光の当たり方だったり、いつもは見かけない人の流れだったり、誰かが拾って隅に置いた落とし物だったり、駐車場にぼこぼこと生えている謎のきのこだったり、そんなところにあるはずもないものだったり。何気なく過ぎていきそうな日々の中にある、「なんか違う」瞬間の中に、わたしの好きなおもしろさはあるんだ。だからつい、好んで撮ってしまうんだ。そういう気づきが、林さんの言葉の中にあった。

絶景スポットへ写真を撮りに行くとして、もし絶景の手前におもしろいものがあったら、絶対にわたしは撮らずにはいられない。「えっ、こんなところに猿出没注意の看板あるじゃん!猿出るんだ!」「なんか謎のトラロープある!なんで!?」なんて言いながら。誰が見ても美しい景色はさほど撮らなかったのに、その道中で見かけた「なんか違う」ものはたくさん撮ってある……なんてことも少なくない。
そんなふうに「なんか違う」と思って撮り溜めていった写真は、この世界をあじわうための鍵になるんじゃないか。そう思っている。わたしにとって、この世界は窮屈に思えることも少なくないのだけど、写真を通してあじわうことで、この世界と少し繋がることができるのだ。

他の人にとっては面白くもなんともない、ただのストリートスナップなのかもしれない。だけど、撮った瞬間のわたしが「なんか違う!これ面白い!」と思っていたのなら、それは自分基準でいい写真と呼びたい。わたしは基本的にいつも自信がないけれど、過去のスナップを見返してあじわっていると、「いい写真撮ってるじゃん」と思えてきて、だんだん気分がよくなってくる。多くの人には伝わらないかもしれないけど、自分にとっておもしろい写真がカメラロールに残っていることは、俯きがちなわたしの背中を押してくれる。

今年参加したGR meetというGRのイベントで、写真家の渡部さとるさんが、「あれとこれとそれを区別しないスナップ」のお話をされていた。どこにもきっちりピントは合っていないけど、いくつかのモチーフが確かに写っている、そんなスナップの話だった。それはわたしがずっと考えていた「写りすぎてない、でも写ってる」という写真の撮り方にも通じるお話だった。バキバキに解像した写真は美しいけど、わたしの撮りたいスナップとは違うなと感じていた。そこにあるものをただあじわうように撮りたいわたしには、渡部さんのスナップのお話が心地よかった。それ以来、スナップを撮るときは、「あれとこれとそれを区別しない」という言葉をずっとポケットに入れている。

写りすぎてなくていいし、ばっちり解像してなくてもいいし、ピントだって甘くていい。ただ、そこにある「なんか違う」おもしろいものが写っている。そういう写真が撮りたい。
そして、写真を撮るときのマインドはなるべくシンプルに軽やかでいたい。シンプルなマインドで撮ったときのほうが、より「あれとこれとそれを区別しない」写真に近づいている気がするのだ。

思い返すと、わたしは昔から寄り道が多い。人生の比喩としても寄り道が多いし、比喩抜きで学校帰りや仕事帰りに寄り道をすることも多々あった。実際、今でもわかりやすい人生を歩めてはいないし、仕事の帰り道はまっすぐ帰るほうがまれだ。
そんな寄り道の中で、「なんか違う」と思う瞬間を拾うことは少なくない。わたしにとって、写真を撮りながら歩くこと、写真を撮りながら生きていくことは、大きな大きな寄り道なのかもしれない。寄り道の中で、思わず「これおもしろいじゃん」と呟きたくなるような写真を撮っていきたい。身の回りの、ともすれば見過ごしてしまいそうな、何も作り込まれていないけどかけがえのない「なんか違う」ものを撮り続けて、世界をあじわっていきたい。

PROFILE

nagisao
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・生粋の名古屋っ子
・のんびり歩きながら写真を撮ることが好きです