兵庫県在住のフォトグラファー・まつかず。さんは、看護師として働く日々の傍ら、日本各地を旅して写真を撮り続けています。彼の写真は、広角レンズを使って風景と人物の両方を丁寧に写し込んだ「広角ポートレート」。その世界観には、旅と生活、癒しと仕事が交差する、まつかず。さんならではのまなざしが表れていました。

カメラとの出会いと、広角レンズのきっかけ

写真を始めたのは大学時代。初めて買ったのはLUMIXのミラーレスカメラで、当時流行していた“カメラ女子”のような小型機種からのスタートでした。「最初はスマホでいいやと思ってた」と語るまつかず。さんですが、友人の一眼レフ写真に衝撃を受け、風景写真に魅せられていきました。
初期は滝や風景の長時間露光に夢中になり、「教科書に載っているような写真が自分でも撮れた」と語る姿が印象的です。転機になったのは、関西でのカメラ友達との出会い。「寄りのポートレートには自分らしさを感じられなくて、風景も人も一緒に活かしたい」と思い始め、広角レンズにたどり着いたそうです。

「風景も人も、どちらも主役にしたい」

広角ポートレートの魅力について聞くと、「せっかく絶景に来たなら、背景もちゃんと写したい。でも人だけだと物足りない。どちらも主役として写したい」と語ってくれました。構図は、「空の分量をどうするか」「背景にごちゃごちゃしたものが写らないようにする」など、細部まで設計。写真に文字入れすることも多く、「その余白を意識してポージングをお願いする」など、作品としての完成度を高めています。

撮影では主に順光を好み、「色がきちんと出て、レタッチもしやすい」とのこと。逆光で色が飛んでしまうのを避け、光の向きには特に敏感に。空や雲のかたちがしっかり見えるように、あえて少し暗めに撮影し、現像で調整することも多いそうです。

被写体は、もっとも気を遣わない存在と

モデルは、奥さまや友人が多いというまつかず。さん。
「服の色や小物も相談しながら決めることが多い」と話し、ポーズや衣装も撮りたい場所や空間に合わせて、共同で考えるスタイルです。「初対面のモデルさんの撮影は、事前に構図や写真をたくさん見て準備しておく」と話しながらも、気を遣わない関係性のなかでこそ自然な表情や空気感が生まれることを大切にしている様子が伝わってきました。

撮ることで、心が整っていく

本業である脳外科看護師の仕事は、緊張感と責任感を伴う日々。そのなかで、「絶景の中で風を感じたり、光を浴びたりすることで心が浄化される」と話します。
「その気持ちをまた仕事に持ち帰ると、患者さんへの言葉や対応にも変化が出てくる気がする」と語る言葉は、写真が彼にとって単なる趣味ではなく、日常と仕事の間を整える手段になっていることを物語っていました。「夜勤明けでも撮りに行くくらい、撮影があるから頑張れる。今は少し控えてるけど、前はそのまま出かけてました」と笑う場面も。

SNSは「癒しを届けるギャラリー」として

SNSでは、「作品をポートフォリオのように並べている」と話すまつかず。さん。ギャラリー全体の色合いや雰囲気を意識しながら、「誰かの癒しになったら嬉しい」という気持ちで投稿しています。「いいねが少なくて落ち込むこともあるけど、写真が悪いわけじゃない。趣味だからこそ、無理せず、自分が好きな写真を載せたい」と、自分らしさを大切にする姿勢が印象的でした。

旅と写真で、人生が潤っていく

「写真を始めてから、日常の見え方が変わった」とまつかず。さんは言います。季節の変化、空の色、風のかたち──カメラを持って出かけることで、日々の中に小さな発見が増えていく。「人生が潤ってくるような感覚がある」と語るその言葉は、写真の力を実感させてくれます。現在は関西を中心に、蔵王や四国など各地を旅しながら撮影。Googleマップのピンや、SNSの保存フォルダには行きたい場所が並び、旅の計画が「日々を乗り切るための原動力」になっているとのことです。

最後に──写真がもたらす“気づき”の力

「写真の魅力は、思い出を残せること。
そして、誰かの心を動かせること。
写真にハマるほど、季節や風景、人の表情に気づけるようになって、少しだけ“得した気分”になれるんです。」そう語るまつかず。さんの写真には、旅の空気やその場の光が、やわらかく、誠実に写し込まれています。風景と人。その両方を大切に写したいと思う心こそが、写真の温かさを生んでいるのかもしれません。